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令和初の年末年始の総括から

11日間で624件の緊急対応と19人のお看取り

· 在宅医療,多職種連携,社会保障,オピニオン,医療機関経営

新しい1年、本日から定期診療も開始となりました。

まずは年末年始の総括から。

わたしたち悠翔会は12月27日から1月6日の11日間に、法人全体で電話再診516件、往診108件に対応しました。そして19人の方をご自宅でお看取りさせていただきました。

在宅医療の24時間対応が機能したことで、救急搬送や病院受診を約500件回避できたかもしれないと考えると、在宅患者さんやご家族の安心・納得、そして地域の救急医療システムの負荷軽減に一定の貢献ができたものと自負しています。

年末年始の期間中、悠翔会では日勤帯は3チーム、夜間帯は2チームが2つの拠点に分かれて待機、患者さんのコールに備えました。

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日勤帯の医師の勤務時間は延べ243時間(1日9時間×9日間×3チーム)。

日勤帯では、472件の電話対応、うち66件に往診で対応しました。つまり、31分に1件のコール対応、3.7時間に1件の往診出動があったという計算になります。十分な余力をもって対応できていたことがわかります。日勤帯の往診対応率は14.0%と例年よりもかなり低くなっていますが、これは地域や施設の多職種(介護専門職・看護師・薬剤師など)との役割分担で在宅での対応が十分に行えたケースが増えていることを意味していると考えます。

夜間帯の医師の勤務時間は延べ300時間((1日15時間×9日間+12月27日6時間+1月6日9時間)×2チーム)。

夜間帯では、152件の電話対応、うち42件に往診で対応しました。つまり、2時間に1件のコール対応、7時間に1件の往診出動があったという計算になります。こちらもかなり十分な余力をもって対応できました。夜間帯の往診対応率は27.6%、日勤帯よりもかなり高くなりましたが、これは夜間帯の介護力(地域や施設の専門職の支援)の脆弱さ、患者さんやご家族の不安が強くなることなどが要因として考えられます。

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11日間という長い期間でした。例年、後半に向けて緊急対応の件数が増えていく傾向がありますが、今回は、後半にかけて緊急対応件数が減っていくという逆の傾向がみられました。

幸い、わたしたちが在宅医療を担当させていただいている地域や施設では、懸念していたインフルエンザやノロウィルス感染症の拡大はありませんでした。例年よりも往診件数が相対的にかなり少なくなったのは、この影響が大きいと考えられますが(2015年は緊急往診の25%がインフルエンザ・ノロウィルス感染症に関連したものでした)、5000人という在宅患者さんの母集団を考えると、トータルでこの程度の対応件数に抑えることができたのは、予想される変化に対するレスキューオーダー、日頃からの十分なアドバンスケアプランニング、そして各地域や施設での多職種の役割分担が機能したからだと思います。

年末年始の緊急対応にご協力いただいた悠翔会の医師、看護師、そして診療支援スタッフのみなさん、そして地域や施設の多職種の方々、本当にありがとうございました!

そしてお疲れ様でした。

また、年末年始の期間中に28人の患者さんが旅立たれました。

19人(68%)の方がご自宅で最期まで生活を継続することができました。救命のために救急搬送された病院で死亡が確認された方が1人、残る8人の方は入院中の病院で亡くなられました。うち過半数が癌の患者さんでした。

年末年始にも関わらず、急激に増大していく介護負担に迅速に対応してくださったケアマネさん、訪問看護師さん、ヘルパーさん、その他の多職種のみなさんのお力添えがあってこそのお看取りでした。

関係各位の皆様、本当にありがとうございました。

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連携する地域の先生方の緊急対応もお手伝いさせていただきました。

電子カルテを通じて患者さんの情報をリアルタイムに共有することで、緊急対応チームも、法人内外の患者さんを区別することなくシームレスな診療ができました。

地域の先生方が、より積極的に在宅医療、在宅看取りに取り組んでいただくためにも、在宅医療専門クリニックとして「休みが必要な時には休める」環境を提供させていただくことは非常に重要と考えています。

24時間×365日、主治医が責任をもって対応できるのが理想かもしれません。しかし、それを100%実践することはやはり困難です。

医療者として、人間として、できる範囲で誠意を持って真摯に診療を行う。患者さんやご家族も、医療者にも家庭と生活、そして自らの健康を守る必要があることを、自然に理解し、配慮してくれる。

そんな医師―患者関係が理想だと思います。

しかし、だからといって、いざというときに電話がつながらない、往診に行けない、というのでは在宅医療は機能しません。

そこでわたしたち悠翔会は2011年に法人全体で24時間確実に対応できる現在の仕組みに移行しました。いま、診診連携を通じて、その機能を地域の先生方に広く使っていただこうと本格的に取り組んでいます。

超高齢化の進行していく巨大都市、東京首都圏。後期高齢者・要介護高齢者の絶対数の増加するこの地域において、在宅医療専門クリニックだけでは地域のニーズに応えることはできません。地域住民にとっての一番の選択は、これまでのかかりつけ医が最期までしっかりと診てくれる体制があること。在宅医療専門クリニックは、かかりつけ医が対応困難な病態や症状、対応困難な時間帯のバックアップを行うことで、それぞれの地域で最適な役割分担ができるのではないかとわたしたちは考えています。

そして、それは、在宅医療専門クリニックも、ソロプラクティスの(一人で診療をしている)かかりつけ医の先生方も、患者さんの24時間を守る地域の在宅医療チームのメンバーとして、より有機的に連携していく、ということになります。

チームで在宅医療を提供するためには、一人で主治医をやっている時以上に、患者さんやご家族との信頼関係の構築が重要になります。

日々の診療を真摯に積み重ね、信頼関係を築いていく。

持続可能な、そして患者さんやご家族にも安心していただける在宅医療を実現するためには、ここが一番のポイントになると思います。

今年は、より理想の形に近づけるよう、チーム全体の診療のレベルアップにも、しっかりと取り組んでいきたいと思います。